【書評】博士の愛した数式|記憶を失ってもなお、人をつなぐ「数式の美しさ」

書評

導入文

記憶が80分しかもたない数学者と、家政婦とその息子との交流を描いた『博士の愛した数式』。
この小説は、**「人と人をつなぐものは何か?」**を静かに問いかけてきます。
数字や公式が単なる計算の道具ではなく、「人間関係を結び、記憶を超える絆」を象徴しているのが印象的です。

この記事では、この本の概要・要点・感想をわかりやすく整理します。

👉こんな人におすすめ:ヒューマンドラマが好きな方、数学に苦手意識があるけれど新しい視点で触れてみたい方。


1. 本の基本情報

  • 書籍タイトル:博士の愛した数式
  • 著者:小川 洋子
  • 出版社:新潮社
  • 出版年:2003年
  • ジャンル:小説/ヒューマンドラマ
  • 読了日:2025/9/21
  • Amazonリンク博士の愛した数式 (新潮文庫)

2. 本の概要(ネタバレなし)

事故によって記憶が80分しか保てなくなった数学者「博士」。
彼のもとに派遣された家政婦は、最初は戸惑いながらも、博士の純粋な数学への愛情に触れていきます。
博士が心を通わせるのは家政婦本人だけでなく、彼女の小学生の息子。
博士は二人に「数式の美しさ」「数字の持つ不思議な力」を語り、数学が三人を結びつけていくのです。


3. 本の要点・学び(3つに整理)

  1. 数学は「人と人をつなぐ言語」である
    博士は、数字や数式を通してしか世界を理解できない状況にありながらも、その言葉で人と絆を結ぶ。数学が「孤立」ではなく「交流」の手段になることが描かれている。
  2. 記憶は失われても、心の交流は積み重なる
    博士の記憶はリセットされても、家政婦や子どもとの関わりは形を変えて残り続ける。時間に制約があっても、人は「その瞬間」に絆を築けることを示唆している。
  3. 日常に潜む「美しさ」を見つける力
    完全数や友愛数など、博士が紹介する数学のエピソードを通じて、「日常生活の中にも数学的な美しさが潜んでいる」と気づかされる。

4. 感想・レビュー

「数字」や「数式」がこんなにも温かい存在になり得るのか、と驚かされました。

中学生や高校生の頃の記憶を呼び起こしながら、小説の中に出てくる数式を思い出しながら読み進めました。普段の生活の中では使わない数式が新鮮な印象をもって問いかけてきます。

フェルマーの公式など名前は知っているけど、詳しくどんな命題なのかを知らなかったものについて興味が湧きました。

博士が語る「28は完全数だ」という一見シンプルな会話の中にも、人に寄り添おうとする優しさが込められているのが印象的です。

一方で、物語は決して派手ではありません。淡々と進み、読者によっては「大きな事件が起きない」と感じるかもしれません。小説の中には「数式」と「阪神タイガース」ぐらいしかでてきませんし、ちょっと古いから阪神タイガースの選手名なども知らないかもしれません。

しかしそうであっても、静かさが、本作の魅力になっています。よくわからないけど、余韻が長く残り、じんわり心を温める小説です。


5. こんな人におすすめ

  • 数学に苦手意識があるが、柔らかい切り口で触れてみたい人
  • 人間関係の大切さを感じたい人
  • 静かで心温まる小説を探している人

6. まとめ

『博士の愛した数式』は、記憶を失った博士が、数字を通じて人との絆を育んでいく物語です。
数字を「冷たいもの」ではなく「温かいもの」として描き出すこの小説は、読み終えたあとも、身近な数字を見る目を変えてくれるはず。

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